今年は戦後70年になり、戦争に関する資料や番組がたくさん作られています。

実は、日本の文学にも戦争を描いた作品が少なくありません。
しかし、それらの作品は歴史的な知識が求められたりするので、なかなか手に取りにくい分野だと思います。
そこで今回は比較的、手に取りやすい戦争文学を紹介します。

まず、半藤一利氏の『日本のいちばん長い日』です。
この本は同じタイトルで映画化されているため、ご存じの方も多いかもしれません。

8月15日までに日本の首相陣や軍部がどのような行動をしていたのか、生々しくドキュメンタリー形式で記述しています。
日本の終戦がいかに混沌としたものであったか、そして今の平和が綱渡りの下で実現したことを実感する一冊です。
一章ごとに注釈がついているのも、分かりやすくて好感が持てます。

次に、『硫黄島からの手紙』は、栗林忠道中将が家族に宛てた手紙を紹介していく一冊です。
戦争という極限状態の中でも、家族を思いやる栗林中将の気配りには頭が下がります。
家族の絆と、戦争が家族を引き裂くという悲劇に心を揺さぶられる人は多いと思います。

そして、阿川弘之氏の『雲の墓標』は若者にとっての戦争を描いています。
特攻隊の隊員となるべく訓練を積む一人の青年を主人公に、生きたいという思いと死への恐怖に駆られながら、一方で特攻訓練に励むという板挟みの苦悩を見事に表現しています。
戦争に賛成・反対などという単純な対比では描くことのできない、戦争下の人間を描いた作品として、いまだに読み継がれる名作の一つです。

最後に、大岡昇平氏の『俘虜記』は戦争文学の不朽の名作です。
本書は、太平洋戦争で捕虜となった主人公が、なぜアメリカ兵は自分を殺さなかったのかと考察する前編と、俘虜収容所の様子を文明的に批評する後編から成立しています。
このように戦争を哲学的に考察し、人間のエゴイズムを明らかにした作品は決して多くはありません。

戦争文学を語る上で、欠かせない一冊でしょう。

もちろん、これ以外にも戦争文学はいくつも書かれています。
戦後70年の節目の年に、ぜひ手にとって読んでみてください。

hiroshima
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